介護と聞くと「自分にはまだ関係ない話」と思っている方も多いのではないでしょうか?
「介護の必要性ができたら施設でも探せばいい」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、介護の問題を他人事にして先延ばしにしてはいけません。
高齢化社会である日本ではもはや他人事では済まされない問題となっています。
この記事では介護について知っておいていただきたい基礎知識をご紹介いたします。
■日本の高齢化という問題
「日本は高齢化社会である」
この事実を否定する方も知らないという方もほとんどいないでしょう。
ニュースや新聞でもよく耳に目にすることなので日本が高齢化社会であるということは誰もが認識をしています。
では現状はどのようになっているのでしょうか?
内閣府のデータによると日本の総人口は2018年10月1日時点で1億2,644万となっています。そのうち65歳以上の方は3,558万人となっており、総人口の28%を占めています。
10人の内、3人が65歳以上の方が占めているということになります。
ではどのような推移をたどって現状のような割合になったのでしょうか?
今から70年前の1950年時点では65歳以上の方は5%ほどしか占めていませんでした。
その後、1970年には7%を超えて、1994年には14%超えました。そして2018年には28%に達してしまったのです。
1950年から2018年まえの約70年で人間が歳をとるように日本という国も歳をとってしまったのです。
今後は介護と仕事をどう両立するのが個人だけでなく、企業や国としての課題になってくるでしょう。
■介護に対するイメージ
あなたは介護に対するイメージをどのようにお持ちでしょうか?
介護に対するイメージは人によって異なりますが、「自分にはまだ先の話」とか「ちょっと休んで介護のための準備をする」と答える方が多いようです。
現在の介護休業の育児・介護休業法で定められています。
一定の条件がありますが、配偶者や自分の父母、配偶者の父母が介護が必要であるという一定の条件を見たした時に同じ人に対して3回まで、93日まで介護休業を取ることができます。
おおよそ3か月程度の介護休業を取ることができるということです。
確かにこの3か月という期間に介護の準備ができれば仕事に戻ることも可能だとは思いますが、本当に準備がすぐにできるのでしょうか、また準備ができれば仕事に前のように戻れるのでしょうか?
介護の平均的な期間については生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査 平成30年度」をご覧ください。
平均すると4年7カ月もの期間が介護に必要な期間なっています。
平均なのでこの期間よりも短いケースもあれば逆にもっと長期化することもあるでしょう。
事前に準備をせずに介護という問題が起きたら3か月の休みを取って対処するというのは現実的ではないと言えるでしょう。
事前に準備を整えておけば介護休業で準備を整えることもできる可能性が大きくなります。
介護休業は仕事と介護の両立をするための制度ではなく、今まで準備してきた介護のプランを実行するための休みという解釈の方が良いでしょう。
■こんな風に思っていませんか?
介護のイメージをもう少し掘り下げてみましょう。介護のイメージについて聞くと以下のような回答をする方が非常に多いように感じます。
・自分の親はならない
・施設があるから大丈夫
・家族が面倒を見るから大丈夫
では、もう少し詳しく見ていきましょう。
自分の親はならない
「自分の親は要介護の状態にはならない」
このように考えている方は多いようです。事実この記事をご紹介している私自身も介護について知るまでは「まだ先の話」「自分は大丈夫だろう」と根拠もなく思っていました。
要介護状態にならないのであればご本人にとっても家族にとっても幸せなことです。しかし、統計上は要介護状態になる可能性があると言えるのでやはり他人事として先延ばしにすべきことではないでしょう。
内閣府の介護事業状況報告で要介護制度別認定者数の推移が公表されています。平成28年の段階で633万人の要介護認定者がおり、過去17年間でおよそ3倍に増加しています。
年齢で見ると75歳以上から介護認定を受ける割合が上がっており、75歳上の方の約30%、3人に1人はは介護が必要な状態になっているという事ができます。日本は世界一の長寿国なので必然的に介護を必要とする方の人数もどんどん増えてくると考えることができます。
また医療技術の進歩も介護を必要とする人数を増加させているという見方もできます。医療技術の進歩によって脳卒中など発作的に死に至る方の人数が減っています。自分の大切な人が長く生きることができるという歓迎すべきことが逆に介護という問題も増加させているのです。
介護サービス、施設があるから大丈夫
次に介護サービスや介護施設があるから大丈夫という点を見てみましょう。
介護施設は色々な種類がありますが、特養について確認をしていきましょう。特養は特別養護老人ホームの略で、自宅での介護が困難となった方が入居する公的な介護施設です。
民間の老人ホームと比べると低料金で利用できるため特養=施設と考えている方も多いようです。
ではこの特養の入居状況はどうなっているのでしょうか?
2018年12月時点の調査結果ですが、独立行政法人「福祉医療機構」が特養の経営動向を社会福祉法人経営動向調査にまとめました。
その数値を確認すると待機者数は約36万人で待機者数が増加傾向にあります。
詳細を読み解くと様々な問題がありますが、介護になったら特別養護老人ホームを利用するから大丈夫とは言えない状況と言えるでしょう。
今後はますます高齢化が進んでくるので待機者数についてはますます問題が出てくる可能性があります。
家族が面倒を見るから大丈夫
共働きが増えている中で家族にまかせることができる?
親も自分の親と配偶者の親と2世帯います。
こんな中で「自分の家族が面倒を見るから大丈夫!」で本当に大丈夫なのでしょうか?
仮に配偶者の方が面倒みると言ってくれたとしても、すべて任せてしまうのは危険です。
介護は1人の介護に4人の手が必要と言われています。
仮に対応するのが女性の場合には、腕力の面で大きな負担がかかるためもっと人手が必要になる可能性もあります。
事前に準備をし、プロや業者の手を借りながら介護をすることを前提としましょう。
■介護は誰しもが経験する可能性がある
介護についてここまであなたのその認識で大丈夫ですか?ということを中心にお伝えしました。
知っておかなければいけないのは介護は誰しもが経験をする可能性があるということです。
日本は世界一の長寿国です。
これは非常に喜ばしいことですが、同時に介護を受けないと生活ができない方も増えてくるということになります。
健康寿命という言葉が最近ではよく耳にするようになりました。
これは介護等を必要とせずに自分の力で元気に生活できる期間を指しています。要は人が自立して生きていける期間のことを言います。
まずは各自が健康寿命を延ばせるように介護について知り、予防をすることが大切になります。
介護を受ける方の割合は、75歳以上から増加をしてきます。
日本は平均寿命がどんどん延びている国なので、今後も75歳以上の方は増加をしてくるでしょう。
また介護とは切っても切れない認知症という問題もでてきます。
認知症も加齢とともに割合が増えていきます。
いつまでは他人事にできないのが介護なのです。
■介護は突然!が3割
「介護の準備が必要なのはわかったけどまだ親は元気だから・・・」
このように思っている方は注意をしてください。
介護が必要になる原因で一番多いのは認知症ですが、2位には脳卒中が入っています。
脳卒中で介護が必要になる割合はおよそ15%。
これは突然、介護がスタートすることを意味しています。
誰もが徐々に介護に向かう訳ではありません。
介護のスタートの3割は「親が突然倒れた」ということからスタートしていることをしっかりと理解しましょう。