介護費用の状況別シミュレーション

介護は今や誰しもが経験をすることになる日本の大きな問題になりつつあります。

これは日本が世界一の長寿国であるがゆえに起こる問題です。長生きをする人が増えるほど介護を必要とする人が増えてしまうのも事実です。

では、介護の費用は一体どのぐらいかかるのでしょうか?

この答えは人によって異なるため一概に論じることはできませんが4つの介護の状況をシミュレーションすることにより概算値をご紹介したいと思います。

■ケース1:近場に住む父親が倒れて介護開始

最初に近隣に暮らしている父親がある日倒れてしまい息子夫婦が介護をするというパターンを見てみましょう。

介護のスタート

ある日、父親が倒れて急遽入院。すぐに手当てをしたため命に別状はありませんでしたが、1か月ほど入院を余儀なくされた。

入院費用 ※高額療養費の範囲44,400円
食費 460円×30日13,800円
その他雑費20,000円
合計78,200円



リハビリへ

身体に後遺症が残ってしまったため退院後は、リハビリ専門の病院に3か月入院をすることに。

入院費用  高額療養費の範囲の44,400円×3か月分133,200円
食費   460円×30日=13,800円×3か月 41,400円
その他  20,000円×3か月 60,000円
合計    234,600円



在宅介護のスタート

自宅に戻り在宅介護を受けることに。近隣に住む息子夫婦が介護を行う。息子夫婦も共働きであるため常時介護をすることができないため介護サービスを利用することに。介護の期間は結局3年に及ぶことに・・

介護サービス自己負担額  月20,000円×3年分 720,000円
医療費自己負担分     月20,000円×3年分 720,000円
合計 1,440,000円



自己負担額の目安

1ヵ月あたりの利用限度額と自己負担額の目安
介護度 利用限度額 自己負担額
要支援1 49,700円 4,970円
要支援2 100,400円 10,040円
要介護1 165,800円 16,580円
要介護2 194,800円 19,480円
要介護3 267,500円 26,750円
要介護4 306,000円 30,600円
要介護5 358,300円 35,830円



特別養護老人ホームに

3年の在宅介護を経て特別養護老人ホームへ。施設には2年間お世話になり他界することに。

特養費用 120,000円×2年分 2,880,000円
合計 2,880,000円

全ての期間を合計すると、倒れた日から換算して5年4カ月の介護期間で、総額4,632,800円の介護費用となります。

しかし、この試算では家の改装費やお見舞いの費用などは含まれていないのでもっと大きな金額になる可能性があります。介護を受けるご本人の年金が基本的な原資にはなると思いますが、一定額のお金は貯めておく必要があるでしょう。

■ケース2:在宅介護から老人ホームへ

次に在宅介護から介護がはじまり認知症が発症して有料の老人ホームに入るパターンをみてみましょう。

在宅介護のスタート

高齢になり一人では生活が困難に・・・在宅での介護がスタート。近くに住む娘夫婦が介護にあたることに。日中は娘夫婦も仕事に子育てにと忙しいため介護サービスの訪問介護とデイサービスを利用。3年間はこの状態が続く。

介護サービス自己負担 15,000円×3年分 540,000円
その他        10,000円×3年分 360,000円
合計  900,000円



入院

病気になり入院をすることに。約1か月入院し退院。

入院費用 高額療養費の範囲 44,400円
食費   460円×30日 13,800円
その他    20,000円
合計    78,200円



認知症の発症

退院後、衰弱が進み1年後には認知症を発症し、有料老人ホームへ。

結果として有料老人ホームでは4年間お世話になることに。

介護サービス自己負担額 20,000円×1年分 240,000円
その他        10,000円×1年分 120,000円
合計       360,000円
有料老人ホームの一時金  200,000円
有料老人ホームの月々の料金 200,000×4年分 9,600,000円
介護サービス自己負担額 20,000円×4年分 960,000円
合計  10,760,000円



全ての期間を合計すると、倒れた日から換算して8年1か月の介護期間で、総額11,738,200円の介護費用となります。驚いてしまう金額ですが、年金月額が10万あるとして8年分だと9,600,000円となるためほぼ年金でまかなうことが出来る試算になります。しかし、その他雑費や医療費などを後半は追加していないためやはり数百万円の貯蓄はほしいところです。

■一人暮らしの親が介護状態に

次に近くに家族がいないというケースを見てみましょう。

現在のような核家族化が進んで状態では、このケースも多いでしょう。

配偶者は先に他界し、親が一人暮らしをしている等状態です。ではシミュレーションをしていきましょう。

認知症が発症

物忘れなどがひどくなり認知症の疑いが・・・病院で「軽度の認知症」と診断される。子供は遠くにいるため遠距離での介護がスタート。この状態が2年続くことになる。

予防系の介護サービスの自己負担額 10,000円×2年分 240,000円
子供の帰省費用(月1回分)  30,000円×2年分 720,000円
合計  960,000円



認知症が悪化

認知症が進行して悪化。デイサービスと夜間訪問介護を利用することに。5年間継続することになる。

介護サービスの自己負担額 25,000円×5年分 1,500,000円
子供の帰省費用(月1回分)  30,000円×5年分 1,800,000円
合計  3,300,000円



グループホームへ

認知症がさらに悪化し、グループホームに入居することになり、さらに5年間この状態が続くことに。

グループホーム費用 100,000円×5年分 6,000,000円
食費 30,000円×5年分 1,800,000円
介護保険自己負担分 30,000円×5年分 1,800,000円
子供の帰省費用(月1回分)  30,000円×5年分 1,800,000円
合計  11,400,000円



肺炎を患って他界

老衰が進み肺炎を患って入院。そのまま他界。

入院費  44,400円
食費   460円×30日 13,800円
子供の帰省費用(月1回分)   30,000円
その他   20,000円
合計  108,200円

全ての期間を合計すると、認知症と診断をされてから換算して12年の介護期間で、総額15,768,200円の介護費用となります。このケースでも1,500万を超える高額の金額に。

■施設を使わずに在宅介護

最後のケースは施設に入ることなく最期まで自宅で介護をするケースです。このケースも今後増えてくることが予想されます。

それは希望の有無に関係がなく施設が不足して入居ができない可能性もでてくるためです。子供二人は数時間で親の自宅に行ける場所に住んでいますが、毎日通うのは困難である状況とします。

男性の場合、家事が苦手だというケースもあるため今回は配食サービスを利用するところからシミュレーションをスタートしたいと思います。

配食サービスと家事サービスを利用

妻を先に無くして男性の一人暮らし。家事は妻にまかせていたため苦手意識が強い。

バランスの良い食事をすることが大事であるため、配食サービスを利用開始。2年間は自立した状態が続く。

配食サービス 20,000円×2年 480,000円
家事サービス 40,000円×2年 960,000円
合計  1,440,000円



認知症を発症

認知症を発症し、介護が必要に。本人は住み慣れた自宅での介護を希望。自宅を介護用に改装し介護開始。

介護サービスは居宅介護サービスと通所サービスを利用。この状態が5年におよぶことに。

介護保険の自己負担分 10,000円×5年分 600,000円
医療費        10,000円×5年分 600,000円
配食サービス 20,000円×5年 1,200,000円
家事サービス 40,000円×5年 2,400,000円
合計  4,800,000円



要介護度がアップ

老衰により要介護度がアップ。訪問介護サービス、夜間介護サービス、訪問看護サービスを利用することに。この状態でさらに5年が経過して他界。

介護保険の自己負担分 30,000円×5年分 1,800,000円
医療費  10,000円×5年分 600,000円
配食サービス 20,000円×5年 1,200,000円
家事サービス 40,000円×5年 2,400,000円
合計  6,000,000円

全ての期間を合計すると、12年の介護期間で、総額12,240,000円の介護費用となります。

■健康寿命を長くする予防が大事

介護がはじまって他界するまで4つのケースをご紹介しました。

どれも概算であり細かな費用を入れていない面もあるため、正確とは言えませんがイメージをすることはできるのではないでしょうか?

当然のことですが、介護の度合いが小さいほど費用負担は小さくなります。

寿命が長くなることは良いことですが、介護が必要となる可能性をしっかりと認識し、資金の準備と健康の維持に努めましょう。

■年金が原資になるとはいえ資金は必要

費用の大きさからますます介護から目をそむけたくなるかもしれませんが、介護の費用は年金費用が主な原資となります。

ケース3つ目の介護費用総額1,500万の場合を見てみましょう。介護の期間は12年でした。

仮に年金月額10万とすると年間で120万、12年で1,440万となります。この場合、不足するのは1,500万−1,440万となります。

この金額であれば自分で貯金をして対応することもできます。

少ないと言っても数百万となるため最近商品数が多くなってきている民間の介護保険の活用も考えてみると良いでしょう。

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