高齢化の影響もあって家計に占める負担の増加が気になるのが医療費です。
健康で暮らすという意味でも「ないに越したことはない」支出ですが、一方で万一病気や怪我をして治療が必要になったときには「ないとどうにもならない」支出でもあります。
この家計に占める医療費にはさまざまな注意点があります。
今回は「家計に占める医療費」についてです。
■平均が算出しにくい
まず平均を出すのが難しい面があるということ。
例えば怪我をして入院してしまった、大きな手術や高度な治療を受けた場合にはその月の医療費は突出して高くなります。
一方健康な日常生活を送れていれば医療費の支出を意識する機会は少なくなるでしょう。
■年齢によっても変わる
世帯の年齢層によっても違いが出てきます。
高齢者の方が病気のリスクが高い一方、医療費の実費負担が少なくなる面もあります。
また小さなお子さんがいる場合には病院で検診などを受ける機会や、急な体調不良で病院に駆け込むといった機会も多くなるのでどうしても支出が大きくなります。
世間一般の平均よりも高い/低いがあまり参考にならない部分もあるわけです。
■医療保険をしっかり考慮
そしてもうひとつ医療費の支出をわかりづらくしているのが医療保険の存在です。
ガンなど、発症してしまうと治療に時間と費用が掛かってしまう病気に備えて医療保険に入っている人も多いはず。
その場合には実際に治療に使う出費よりも、万一のときに備えて支払う保険料の方が一か月の医療費に占める割合がずっと高くなります。
言い方を変えれば、家計に占める医療費が高いかどうかは「毎月支払っている医療保険の保険料が適切なのかどうか」にかかっている面があるわけです。
いくら万一の時に充実した補償を得られるからといって毎月高い保険料を支払っているのでは、家計を圧迫するばかりであまりメリットが得られない可能性もあるわけです。
■一般的な医療費の割合は?
では具体的に一般家庭では月々の家計に占める医療費の負担はどの程度になっているのか?
総務省が発表した2018年の「家計調査」のデータで知ることができます。
このデータは2人以上の勤労者世帯を対象にしたものです。
これによると一か月の支出の全国平均は31万5300円なのに対して保健医療費は1万3300円、全体の4~5パーセント程度となっています。
国民皆保険の日本では健康な生活を送れていれば一か月に医療費が1万円をこえるようなことは少ないですから、各所帯の平均年齢や健康状態によってかなりバラつきがあることも予想されます。
例えば10世帯のうち8世帯が一か月の医療費を1000円しかかけていなくても、残りの2世帯が20万円かけていれば全体の平均は2万をこえる高い水準になるわけです。
ですからあまり平均はあてにならない面も出てきます。
そこで同じく総務省によるデータで、世帯主の世代別に分けた支出の割合も見てみましょう。
若い方が支出の割合が低く、高齢な方が割合が高くなる印象もあるわけですが…
~29歳までの場合は支出の全国平均が21万5000円なのに対して保健医療は9100円、30~39歳までは支出が28万900円なのに対して1万700円。
これが医療費の支出が多くなるのが50代を超えてから。
50~59歳では平均支出が35万1400円に対して医療費は1万2700円、60~69歳の支出が30万2100円に対して医療費が1万4000円となっています。
■注意すべきポイント
注意したいのは世帯主の年齢が低い方が医療費が低くなるだけでなく支出も少なくなる点です。
ですから50代の家計に占める医療費の割合よりも20代の家計に占める医療費の割合の方が高くなる、つまり「負担が大きくなる」ことを意味しています。
年齢を重ねるにつれて教育費をはじめ「払わなければならない」ものが増えてくるのに対して、キャリアを重ねて収入が増えています。
ですからそのバランスがとれているかどうかがポイントになってくるのでしょう。
とくに40代~50代にかけては医療費の増大よりも収入と支出全体の増大の方が上回っているのが「健全な状態」となるわけです。
日々健康に留意することはできても、いざという時の医療費を削るのは難しいものです。
それだけに保険料も含めて他の支出とのバランスを考慮し、家計に対する医療費の負担が大きくなり過ぎない程度のやりくりが求められるでしょう。