相続税の基礎控除の改定があってから相続の話は非常に盛りあがり、不動産業界・保険業界・銀行業界や証券業界などでたくさんの相続対策の手法でてきました。
どれもこれも相続の対策に効果があるとは思いますが、その効果を得るためにはそもそもの問題を抱えていないといけません。
相続税の支払いについて全く問題を抱えていないのに、相続税の支払いのための施策を打っても意味がありません。
「そんなことをする人はいないだろう??」と思うかもしれませんが、相続というわかりにくい分野になってくるとこのようなこと、問題と対策のミスマッチが割と頻繁に起こります。
今回は、相続の対策をする上で押さえたい3つのポイントをご紹介いたします。
■【実話】こんなことになっていませんか?
実際にあったお話を少し内容を変えてお伝えいたします。
※文章量の問題で詳細を省きます
ある生命保険の募集人の方(募集人A)が、自分のお客様が相続で問題が出る可能性があるということがわかり、その方{法人経営者であるB社長)へ対策を促しに訪問をした時の話です。
B社長は、ある地方で長年経営をしており間もなく年齢は60歳前半。
会社は様々な波を乗り越えて業歴が数十年になっていました。
募集人Aはある勉強会で自社株の勉強をし、その時にこのB社長の会社が自社株の相続の時に困るのでは?と心配になり話をすることにしました。
自社株の相続の問題とは、会社の創業者が保有している自社の株式の評価が高くなり、相続をすると多額の納税が必要になるというものです。
自社株はあくまで評価として価格が高いだけであり、納税するための現金が不足する場合があります。
また相続人が複数人いて特定の方=事業後継者にしか、財産を渡すことができないと遺留分の面などで問題が生じる可能性があります。
募集人Aはまさにこれらの点を心配してB社長に「自社株の相続で多額の税金が発生する可能性があります。また分割の問題で相続人が揉める可能性もあります。自社株の評価から対策をしてみてはいかがでしょうか?ご協力もできると思います」と伝えたところ、「自社株ならすでに生前贈与で安い価格で息子に渡しているから大丈夫」という答えが返ってきました。
この話のどこに問題があるのでしょうか?
B社長は、相続税の面だけを考えて先に後継者である息子に自社株を贈与しました。
確かに財産は減少するので相続税の対策としては有効でしょう。
しかし、気になるのは安い価格という点。
この後、話を進めていくとどうやら創業時の出資額相当の金額で贈与をしているということが判明しました。
自社株の評価は、出資時の額で計算をするのではなく、時価で計算をする必要があります。
実際には未上場の株式は時価で算出ができないので、相続税の評価方法によって計算をされることが多いようです。
さらに話をすすめるとB社長は、分割の問題については全く考慮をしていませんでした。
特定の贈与は、特別受益になる可能性があり全額持ち戻しになる可能性があります。
要するに、結局生前贈与したものは全部相続財産に含めて分割をするということになるため、自社株が後継者以外に行ってしまうという事態になりかねません。
現在では、一部法改正があったりと状況も変わっていますが、相続対策で問題と対策のミスマッチが起こりやすいのはこのような場合に起きやすくなっています。
■対策をすべき大きな問題は3つ
相続の対策をするためにはまずどこに問題があるのかをしっかり把握する必要があります。
問題は大きく3つに分けることができます。
それは、「納税はできるのか?」「分割はできるのか?」「財産の評価はいくらなのか?」です。
問題1:納税はできるのか?
財産が被相続人から相続人に移転する場合、相続税の対象となります。
相続税は、相続発生から10カ月以内の現金一括納付が基本です。
財産は、現金以外にも不動産や自社株式など非現金性の財産も含まれているため、非現金性の財産が多い方は、現金での納付に苦慮する可能性があります。
問題2:分割できるのか?
相続は、亡くなった方の財産を残された相続人で分ける必要があります。
必ずしも均等にしないといけない訳ではありませんが、相続人が複数人いる場合には均等になる方に近づけないと揉める可能性があります。
残された財産が、不動産が多いとか事業性の資産となると分割することが難しくなります。
私が知っている不動産オーナーのご家族の方は「不動産で残されても管理が困る。」と言っていたのがすごく印象に残っています。
問題3:財産の評価はいくらなのか?
現金であればそのままの金額が評価額なので問題がありませんが、他の財産はそうはいきません。
評価額が高いと相続税の支払いが発生する可能性があるため、なるべくなら時価は高いが相続税評価額は低い財産であることを相続人は望むでしょう。
相続税評価額は自分で勝手に決めることができるものではありませんので、事前に評価がしやすい現金に換えておくなどの対策が必要な方もいるでしょう。
■3つの基本対策
相続の3つの対策は前述の大きな3つの問題点に対して行っていくのが基本です。
3つの基本対策をご紹介します。
対策1:相続税納税対策
相続税の支払いが発生する人が対象なので、該当する方は一部の方になるでしょう。
しかし、前述のとおり相続税は現金一括納付が前提となります。
現金がないと納税ができないので、事前に現金化できる財産はないか?生命保険は活用できないか?を検討する必要があります。
対策2:分割対策
すべての方が検討をしない対策になるのがこの分割対策です。
財産は家と土地だけとか、不動産多数とか、会社経営者などは分割をしにくい財産が多いということを意味します。
遺言を作成してしっかり財産を渡したい人に渡せるようにする、事前に分けやすいように現金化しておく、遺留分の対策をしておくなどの対策が必要です。
財産を分けることができないということは、それだけ揉める可能性があると思っておいた方がいいでしょう。
対策3:評価減対策
上記の2対策と相反するところがありますが、相続税評価額を下げるためには評価の高い財産から評価の低い財産へ変える必要があります。
例えば、現金はその額面が評価額となりますが、その現金を土地に変えるだけ約2割ほどの評価減の効果を見込むことができます。
簡単にできる方法ではないため専門家に相談をして進める必要がありますが、基本対策の1つと言えるでしょう。
ちなみに、少し奇をてらった提案がこの評価減対策には多いのも特徴です。
しかし、まずは基本に乗っ取った方法こそが王道になるので、この評価減という方法にこだわり過ぎないようにしましょう。
■各対策の評価
最後に各対策を表でまとめておきます。
相性を〇・△・×で記載をしていますが、みなさまの暮らし.NETの独断と偏見によるものです。ご参考程度にお願いいたします。
現金 | 有価証券 | 不動産 | 生命保険 | |
納税対策 | 〇 | △ | × | 〇 |
分割対策 | 〇 | △ | × | 〇 |
評価減対策 | × | △ | 〇 | △ |
現金は、納税も分割もしやすいですが、評価は額面通りになるため評価減には使えません。
有価証券は一般の株式や投資信託を想像していただければと思います。現金よりも価格変動があるためすべて△としています。実際には納税や分割などは流動性の高い商品であれば〇に近くなってくると思います。
不動産は、評価減対策には非常に効果的ですが、流動性が低いため納税や分割には不向きです。
生命保険は、被相続人が被保険者になれるのであれば納税にも分割にも向いています。評価減としては生命保険の非課税枠を考慮して△としています。
生命保険が良くて、不動産がだめと言っている訳ではありません。
あくまで抱えている問題によってマッチする対策方法が異なるということです。
■専門家に相談をしましょう
最近は相続に関する書籍やWEBサイトも非常に多くご自身で知識を得る上でこれらを活用するのは非常に重要です。
しかし、あなたが相続の専門家でない限りはそれぞれの分野の専門家に相談をするようにしましょう。
当サイトの運営元である株式会社みなさまの保険.COMでは、各専門家と連携してお客様の相続対策を支援しておりますので、お困りの際には、または問題があるのかどうかわからないという時にはぜひお声かけください。