相続と聞くと「お金持ちの問題でしょ?一般庶民には関係ないよね!」と考える方も少なくありません。
実際にテレビドラマなどで取り上げられるのは「お金持ちの相続(争続)」です。
ドラマの場合、お金持ちの権力闘争や資産の取り合いは面白いストーリーになるので題材がこちらになるのは当然でしょう。
しかし、実際には相続は全ての人が対策を検討しなければなりません。
今回は、「資産家ではな人ほど相続で揉めるのはなぜか?」についてです。
■相続はお金持ちの問題ではないのか?
相続とは、亡くなった方の財産等を相続人が引き継ぐことを言います。
一般的には家族の方が多いですが、遺言などを活用すると他人にでも財産を渡すことができます。
相続は平成27年の基礎控除引き下げの改正で大きな注目を集めました。
平成27年前後から書籍やテレビ、雑誌などでも多く取り上げられて相続というキーワードが広く認知されるきっかけになったのではないでしょうか?
平成27年の改正は、相続の税金に関する改正で、相続税を支払う方は亡くなる方の数%しかいないことから、「相続ってお金持ちの問題だ」と認識をされたのだと思います。
しかし、相続税は相続税法の話であり、相続自体は民法の話です。
税金がかかるほど財産がないからと言って相続の問題はない、ということにはならないのです。
■資産家ではない人ほど揉めるのはなぜ?
相続は相続税法だけではなく、民法が大きく関係しています。
正確にいうと相続は民法の規定で、税金という一部の話だけは相続税法で規定されていると考えた方が良いでしょう。
その民法に沿って考えた相続で揉めるのは、お金持ちだけではなくそれ以外の一般の方も含まれてきます(実際には資産の額が少ない人ほど揉めるという言われています)。
なぜ資産家ではない人の方が揉めてしまうのでしょうか?
理由を3つご紹介します。
理由1 対策をしていない
お金持ちの方は、相続税の関係で相続に対する興味が深く、また金融機関や専門家などの各取引先から相続についての提案を受けることが多々あります。
そのため一定の知識を持ち、一定の対策をしている方が多いため揉めることが少なくなっていると考えることができます。
一般の方は、自分には関係ないと放置をしてしまい、結果として相続が起こってから問題が発生します。
まずは相続は全ての人に関係があるということを認識しましょう。
理由2 分けることができる資産が少ない
資産家の方は、現金・金融資産・不動産・骨董品など資産家であるがゆえに資産の内訳が多様化しています。
資産がたくさんあるとないよりは分けやすいという特徴があります。
長男には不動産で、次男には金融資産・・・などの振り分けができるということです。
一方で資産が少なく家一軒しか資産がないなどとなると分けることが難しいため残された相続人同士で資産の取り合いになってしまうことがあります。
資産を分けることができるほど揉めにくいということを理解しておきましょう。
理由3 相続と相続税の問題の混同
相続人はお金持ちの問題ではないという前述の部分でも書きましたが、相続と相続税の違いを理解していないことにより問題が発生してしまうことが多々あります。
相続は民法、相続税は税法で拠り所とする法律がそもそも異なります。
相続を勉強している人でもなかなか理解ができずに苦しむのがこの民法と税法という二面性です。
私見ですが、相続の対策がうまくなされないのもこの二面性が大きく関係していると思います。
税理士先生に相談をして「相続税は問題ありません」と言われれば、相続の対策は必要ないのだと解釈をしても不思議ではありません。実際には民法側で問題があり弁護士先生などに相談をすると「対策をしないと大変ですよ」と言われてしまうこともあるでしょう。
■資産が少なくて揉める事例紹介
資産が少なくても揉めるということに対してイメージがしにくいと思いますので、事例を一つご紹介したいと思います。
3人家族 母・長男・長女の例
父はすでに他界をしており、高齢の母が持ち家で長女と一緒に暮らしているというケースを考えてみましょう。
長女は結婚もすることなく、母と一緒に暮らし一緒に協力をしながら生活をしています。
長男は、家族を持ち少し離れた場所で暮らしており、仕事に家族にと忙しいため実家にもなかなか戻りません。しかし、忙しいながら実家の母を気にかけている優しい息子さんです。
ここで突然、母が他界をしてしまいました。
悲しみに暮れる間もなく相続の手続きです。
もちろん資産家ではないので今まで何も対策はしていません。テレビで少し相続についてやっているのを見たぐらいの知識しかありません。
母の財産を確認すると、自宅1,000万、現金200万でした。
この金額では相続税はかかりません。
しかし、この兄弟はこの後、大揉めをしてしまうことになります。
一体なぜなのでしょうか?
どちらの主張も間違っていない
相続は遺言がない場合には、遺産分割協議(相続人の話し合い)によって分けなければなりません。
そこで長女と長男は話し合いをすることにしました。
長女は、「私はこの家に住み続けたい。だから家を相続したい」と言いました。
長男は、「残されたのは二人だから全て均等に半分ずつに分けたい」と言いました。
長女の言い分だと、長女が1,000万円の自宅を相続して、長男が現金200万を相続するということになります。
長男の言い分だと、長女も長男も600万円を相続することになります。
どちらの言い分が正しいのでしょうか?
読む方によって好みはあるかもしれませんが、どちらにも言い分があります。
これが資産家ではないのに相続で揉めてしまう典型的なパターンになります。
■相続の対策は全ての人が必要
いかがでしたか?
相続は人生の終わりを迎える人全てに関係があります。
資産があるかないかだけで判断はできません。
全ての人が対策を実行する必要はないかもしれませんが、対策を検討する必要はあります。
つまり、自分たちは相続で揉める可能性があるのか、揉めるのであれば何をしなければならないのか、ということを考える必要があるということです。
自分には関係ない・・・と放置しないようにしましょう。